まいどひろきんです。
今日は公務員のストライキについてです。
民間企業の従業員はストライキができますが、公務員はできません。
なぜなのか?ストライキできない代わりに何かできることはあるのか?
調べたことをまとめてみましたよ。
公務員はストライキが禁止。そもそもストライキってなんだ?
公務員がストライキをすることは法律で禁止されています。
ストライキとは雇用側(経営陣や企業など)の行動や考えに対する反対の意見や苦情を、労働者や労働組合が労働を行わないことで相手に対し主張するものです。
本来日本では、勤労者が労働条件を改善するために、団体で仕事を拒否するというやり方で抗議することは権利として認められ、保障されています。
この「ストライキが権利として保障されている」というのは、
- 刑事責任を問われない
- 損害賠償を請求されない
- 一方的に解雇されたり団体交渉を拒否されない
といことです。
このことについては日本国憲法第28条に定めがあり、「労働基本権」、「労働三権」とも言われています。
しかし公務員に関しては、労働三権のうちストライキなど団体で抗議すること、いわゆる「団体行動権(争議権)」が一律で禁止されているんです。
- ストライキとは、労働者や労働組合が労働を行わないことで雇用側(経営陣や企業など)の行動や考えに対する反対の意見や苦情があることを主張するもの
- 日本国憲法では労働者に対してストライキをする権利が保障されているが、公務員に関してはストライキをすることは法律で禁止されている
公務員のストライキは制限されている。なぜ?法律で決まっている。
公務員のストライキ禁止については国家公務員が”国家公務員法第98条2項”、地方公務員が”地方公務員法第37条1項”で規定されています。
違反すると処分の対象となり得ます。
それというのも、公務員がストライキをしてしまったら、国民全体の共同利益に重大な影響を及ぼす、またはその可能性があるからです。
例えば僕は元公務員で公安職だったのですが、事件が起きているのに警察が「ストライキ中なんで」といって駆けつけなかったり調べなかったら困るわけですね。
ちなみにフランスでは大部分の公務員にもスト権があり、ストが行われるとこんな感じになるようです。
日本大使館からフランス国内の無期限のストライキの注意喚起。
12月5日以降フランスでは
●交通機関止めます
●犯罪が起きても警察は仕事しません
●火事が起きても消防は仕事しません
●病人がいても病院は受け入れません
●役所も閉めます
●それから電気も止めますって国が滅びない? pic.twitter.com/24vkrvX9VS
— えもじょわ (@emojoie) December 4, 2019
国家公務員のスト禁止は国家公務員法第98条2項で決まっている
国家公務員法第98条2項によると「職員は、政府が代表する使用者としての公衆に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をなし、又は政府の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない。」とされています。
地方公務員のスト禁止は地方公務員法第37条1項で決まっている
地方公務員法第37条1項によると「職員は、地方公共団体の機関が代表する使用者としての住民に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をし、又は地方公共団体の機関の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない。」とされています。
公務員が禁止されている同盟罷業、怠業その他の争議行為とは?
同盟罷業(どうめいひぎょう)というのは団結して就労を拒否すること、つまりこれがストライキのことです。
ちなみに怠業とは団結して意識的に作業能率を低下させることです。
他にも「一斉に年次休暇を出して業務の運営を妨害する」ということなども禁止されている争議行為になりますよ。
- 公務員のストライキ禁止については国家公務員が”国家公務員法第98条2項”、地方公務員が”地方公務員法第37条1項”で規定
- 違反すると処分の対象となり得る
みなし公務員はストライキできる?
公立の病院など、独立行政法人が運営する職場に勤めているという場合もあると思います。
独立行政法人が運営している事業の場合、「公務員型」と「非公務員型」というのがあります。職員の立場も公務員か公務員でなく、みなし公務員となるかが分かれます。
みなし公務員は公務員ではありませんが、守秘義務など公務員に準じた一定の制約を受けるんですよ。では、ストライキはできるのでしょうか?
公務員型であればストライキは禁止ですが、非公務員型(みなし公務員)であればストライキ権があります。
ただし、公務員法による身分保障もありませんよ。
いや、もう争議権含めた労働三権ありますよ。非公務員化されてます。みなし公務員とは、罰則の適用の際に公務員と同じというのと、公務員同様の守秘義務があるということです。労働権とは別のことです。わかりにくいですが。 https://t.co/qPtSEFtkfB
— Hemmi Tatsuo (@camomille0206) September 19, 2016
また、①運輸事業、②郵便、信書便又は電気通信の事業、➂水道、電気又はガスの供給の事業、
④医療又は公衆衛生の事業など一般の人々のの日常生活に欠かせない事業の争議行為については、労働関係調整法によって特別な決まりがあります。
公益事業での争議行為が国民生活を著しく阻害するおそれのある場合、内閣総理大臣が中央労働委員会の意見を聞いて「緊急調整」を決定し公表することになっています。これにより、争議行為は50日間禁止され、その間に解決のための調整が行われますよ。(働関係調整法第35条第2~5項、第38条、第40条第1項)
また、公益事業において争議行為を行う場合、少なくとも10日前までに、労働委員会及び厚生労働大臣又は都道府県知事にその旨を通知しなければなりません。(労調法第37条第1項)
また、通知を受けた厚生労働大臣又は都道府県知事は、直ちに公衆が知ることができる方法によってこれを公表しなければならないとなっています。(労調法施行令第10条の4第4項)
引用:政府の行政改革
- みなし公務員はストライキ権がある。しかし、国家公務員法や地方公務員法による身分の保障はない
- みなし公務員でストライキ権はあっても、郵便など公益事業においては労働関係調整法で特別な決まりがある
公務員がストを行う、煽るなど違反したらどうなる?
ストライキなど、違法行為や全体の奉仕者としてふさわしくない非行等である”非違行為”を行った場合の懲戒処分については指針や規程が設けられています。
国家公務員の場合、人事院によって「懲戒処分の指針」が作られています。地方公務員はそれぞれの自治体で指針や規程がありますよ。
懲戒処分の指針などによると、実際の懲戒処分の種類や程度は標準例や基準を参考に、動機や社会への影響、過去の非違行為の有無などを考慮して総合的に判断されることとなっています。
▼国家公務員の場合。人事院「懲戒処分の指針」より抜粋
免職 | 停職 | 減給 | 戒告 | ||
違法な職員団体活動 |
単純参加 | ● | ● | ||
あおり・そそのかし | ● | ● |
引用:人事院
さらに、国家公務員法110条1項17号、地方公務員法61条4号によると
- 違法な争議行為の遂行を共謀したり、あおったり、これらの行為を企てた者は、刑事罰(3年以下の懲役又は100万円以下の罰金)の対象
となっています。
公務員にはストライキ権がない。代わりになるものはあるのか?
公務員にはストライキ権がありません。
しかし、その分十分な利益を保障されないと割に合いませんよね。
国際労働機関(ILO)からも公務員への労働基本権付与、消防職員や刑事施設職員への団結権および団体交渉権の付与、国家の運営に関与しない公務員への団体交渉権・協約締結権・ストライキ権の保障などについて10回以上勧告されているんですよ。
では、現状はストライキ権の代わりにどういったことがあるのでしょうか。
法律による身分の保障がある
公務員はストライキ権はありませんが、
- リストラされない
- 給与が安定している
- 福利厚生がしっかりしている
という職業です。
免職という「解雇」同様のものもありますが、免職となる人はよっぽどのことをした人です。
例えば公文書の改ざんとか、収賄をした場合には免職となることもあり得ます。
民間の企業の従業員のように景気や業績によって給与が大きく変動することもありません。
その分、民間企業の人からはおかしいといわれるんですがね…
公務員はストライキ権の代わりに「給与勧告制度」がある
公務員はストライキ権を含む労働基本権に制約があり、給与など勤務条件の改定に自ら関与することができません。
そのため、第三者機関の人事院や人事委員会が公務員と民間企業の給与水準とバランスをとるために、原則毎年「給与勧告」を実施します。
給与勧告の流れは人事院や人事委員会が
- 民間の事業所の給与や諸手当の支給状況を把握
- 役職や勤務地が同じ公務員と民間従業員を比べる
- 必要な見直しを国会や内閣、県知事などに求める
というようになっていますよ。
あくまで「求める」なので決定権があるわけではありません。
また、国交労連の声明などでも述べられていますが、以前よりも多忙であっても民間企業に合わせてお給料やボーナスが減ることもあり、守られているとは感じにくいかもしれませんね。
公務員は仕事が無くなることはなく、給与も貰えていいよな!
逆に仕事を放棄することはできません。給与も能力給ではなく、仕事量に関わらず条例規則で定められた金額です。
さらに、民間の給与体系を常に確認し、毎年給与は変動しております。#役所よろずごと相談— 役 所 よ ろ ず ご と 相 談 (@aAbMZ2YR5FAZSs3) May 3, 2020
労働組合による春闘、秋闘で要望を提出
公務員であっても団体交渉権がある場合は労働条件の改善を要求する団体交渉を行うことができます。
日本では「春闘」、「秋闘」といって毎年春や秋に労働組合やその全国組織が一斉となって賃上げなどを企業に要求する行為があるんです。
公務員も例外ではありません。
▼自治労連が「2022年国民春闘要求書」を総務省に提出
引用:自治労連
公務員のお給料は春闘で要求したからといってすぐに変わるということではありません。
給与勧告も8月以降ですしね。
しかし、
- 民間組合の春闘と連動すること
- 人事院や総務省との交渉(中央交渉)
- 賃上げ以外の課題に対する各自治体での交渉
という点で、まったく意味ないというわけではありませんよ。
ちなみに、
民間労組のスト支援をする
公務員はストライキができませんが、民間の労働組合のストライキを支援する行動をとるというケースがあります。
民間労組の行為を支援することで、自分たちの権利を主張すると同時に、民間の賃上げが行われれば公務員のお給料も上がりやすくなるということがあります。
兵庫から参加しています。
民間賃金が上がらないと、公務員の賃金も上がりません。春闘勝利で負のスパイラルから抜け出そう! https://t.co/dJ3ljnSmrr— 兵庫県国公 (@hyogokenkokko) March 2, 2022
順法闘争
業務のルールを完全に順守することにより作業能率を落とすことで当局の業務運用に打撃を与える「順法闘争」というのがあります。
たださぼったり仕事を放棄したストライキは懲戒処分の対象ですが、ルールを守って仕事を遅延させたりする方法です。
例えば有給休暇を一斉に取るとか、仕事が残っていても一貫して就業時刻には帰る、というやり方です。
JRが国鉄だった時代だと点検をやりまくって電車を遅らせるという方法もとられていました。
個人としては、職員団体などに相談。中には提訴するという方法もある
個人としてできることといえば、職員団体(公務員の労働組合)に相談したり、中には提訴する人もいます。
ただし、提訴で勝利する場合は明らかに不当である証拠なども必要です。つまり、「賃金上げてほしい」というだけでは難しいでしょう。
一方で、サービス残業にあたる時間分の給与が未払いである、というような場合には効果があるケースもあります。
公務員は一度もストライキをしたことはないの?
公務員はストライキが禁止されているとはいえ、一度もストライキをしたことがないのでしょうか?
実は公務員もストライキをしたことがあるんです。
ほんと日本人て良くも悪くもお人好しだよ。
残業代払わないんだったら、働きませーんってストライキ的なことしたっていいと思うで。
公務員のストが法で禁止されていたとしても、皆んなでやれば国だって何も出来ないんだから。海外はそれをやる勇気がある。
知らんけど。
— ボロ雑巾 (@Borozokin13579) February 16, 2021
昭和57年農林省の例
当時、農林省(今の農水省)の労働組合(全農林労組)の役員の声掛けで2回にわたる職場放棄が行われました。
農林省及びその出先機関の合計4万0786名のうち、九割を超える3万8288名の全農林組合員が参加したんですよ。
全国各地において二日ないし五日間にわたりストライキ実施を指導した農水省職員で全農林労働組合の組合員は停職3~6か月の処分となりました。
教員組合の例
過去には教員組合でもストライキが結構行われています。
- 【1998年(平成10年)】都高等学校教職員組合(都高教)と都公立学校教職員組合(東京教組)による、7月10日の東京都教育委員会による管理運営規則改正に反対した時限スト
- 【2001年(平成13年)】3月21日の北海道教職員組合(北教組)による、1971年(昭和46年)に北海道教育委員会と北教組が結んだ労使協定(46協定)の一部削除に反対する時限スト
- 【2008年(平成20年)】1月30日の北教組による、査定昇給制度導入に反対する時限スト
2008年のストでは戒告処分のほか、1月の給与から1時間分を減額されるなどの処分が行われています。
https://twitter.com/Kazu0402cd/status/1482604050361491458
日本全体でストが減っています。
特に公務員の場合は違反してでもストをする意味ある?と思う人が増えているかもしれませんね。
また、最近では労働組合に入りたくない、脱退したいという人も増えています。
国家公務員の職員団体加入率でも令和元年には40.2%だった加入率が令和2年度には38.3%に落ちています。
個人的には、組合などで団結したり交渉に向けて動くというのがだめだとは思いません。それによって勝ち取られた権利がありますからね。
しかし結果が出るのに時間がかかることが多いです。
すごく頑張っても、自分の労働条件や賃金が改善されないこともあります。
とにかく全体を変えたいというのであればそれでいいと思いますが、自分の収入も上げたいのであればダイレクトに自分の収入にかかわることに力を入れるというのも検討が必要だと思いますよ。
まとめ
- ストライキは「労働条件を改善してほしとい」という気持ちを仕事をしないことで雇い主などに訴える行為
- 日本国憲法では労働者に対してストライキを含む争議権が保障されているが、公務員は国家公務員法や地方公務員法でストライキが禁止されている
- 仮に公務員がストライキを起こした場合、参加するだけでなく煽ったりそそのかすとより重い処分を受ける可能性がある
- 公務員にはスト権が無い代わりに、「法律による身分の保障」や「給与勧告制度」がある。
- 公務員でも職種によっては団体交渉はできるが、非現業職には協約締結権もなく、職員団体の加入率も減っている
- 公務員はストライキが禁止されているが、その中でもストライキをした人たちはいる
今日は公務員のストライキについてでした。
そもそも安定した職業に就きたいと思って公務員になっていたり、公務員試験の時に「公務員にはストライキ権がない」としっかり知ったたうえで公務員になっているため、ストライキをするつもりはないということもるでしょう。
しかし、少しでも環境を変えたいと思うのであれば、何かしらアクションを起こすことが大事です。
ぜひ、自分の幸せをつかむ決断や行動をしてみてくださいね!
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